渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「六本木で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木→渋谷駅前

ネタとして秀逸どころか実際に大いに使える『データサイエンティスト レベル表』(記事紹介)

はてなIDコールから突然Twitterにリプが飛んできたので、何かと思ったら以下の@さんの記事で言及されていたのでした。


これがですねぇ、もうこれ以上ないくらい大変面白かった!ので是非とも紹介させていただきたく。ポイントとしては面白いだけでなく、実際にデータサイエンティストのレベル分けとしても大いに使えるところだと思ってます。


正直言って、どのレベル設定も非常~~~によく出来てます。僕の理解でかいつまんでまとめてみると、

  • レベル0:まだデータ分析してない
  • レベル1:Excelなどでデータ分析の真似事を始めたばかり
  • レベル2:RやSPSS機械学習統計学データマイニングっぽいことが出来る
  • レベル3:原理を知る必要が出てきてPRMLに手を出し始める
  • レベル4:PRMLは大体読みこなせて、KDDとかICMLとかの論文を読んで実装し始める
  • レベル5:レベル4までを内包し、manager / independent contributorのいずれかに分かれ始める
  • レベル6:Harvard Business Reviewに載っていたような「スーパーマン」的存在
  • レベル7:行き過ぎてスティーブ・ジョブズのなり損ないへ


レベル6以上はネタとして秀逸なんですが、個人的に一番感銘を受けたのはやはりレベル5でしょうか。と言うのは、これまでのデータサイエンティストにまつわる言説で、マネージャー的立ち位置について触れたものは意外にもほとんどないからです。

レベル5


このレベルの人達は分析のエキスパートとマネージャに別れます。エキスパートは博士号取得者が多く既存の論文を応用するだけでなく必要に応じてアルゴリズム開発することができます。ただし全ての分野についてこのレベルを保つことは大変難しく大抵は1つか2の分野についての専門家です。


マネージャはレベル5以下の分析者をまとめてプロジェクトを運営できる人達です。エキスパートほどの知識はありませんが技術的な知識とマネージメント力の両方が必要とされます。一般的にデータ分析大好き人間はマネージメントをするよりも分析をしていたい人間が多いので両方の能力が高くかつマネージャという立場を引き受けてくれる点で大変貴重です。またエキスパートよりもコンサルティング力を求められます。


なおマネージャになるには必ずしもレベル4を通過するとは限らずレベル3から飛び級で昇格することもあります。

ありがちな発言


「大事なのはビジネス理解なんだ」


「ありがちな発言」がナイスなんですが(笑)、僕個人としてはここの記述が物凄く気に入っております。


理由は簡単で、(僕の見聞の範囲ではありますが)どこの現場でも優れたデータ分析各方面のエキスパートは(それらを必要している現場では)十分に揃いつつあるんですが、それらのエキスパートを適切に束ね、それぞれの現場を全体として目指しているゴールにcoherentに向かわせていくという肝心要のマネジメントを担う人材が不足しているように感じられるからです。


正直言って、これだけデータ分析が注目される時代になったことで、どこの現場にもそれなりの人材は集まっているように見受けられます。機械学習、最適化計画、計量経済学、統計学といった学術スキルにITスキルが伴った、優れた人材がどこの現場にも徐々に集結しつつあるという。。。


しかしながら一方で、それらの優れた人材が生み出すアウトプットを、ビジネス面でのソリューションを求める現場に伝えるという試みには、まだまだ苦戦しているところが多いという印象です。だって、例えば普通の文系(例えば法科出身)の意思決定を担うマーケッターに、「今使っているdeep learning分類器の汎化性能が悪かったので第m層とn層のシグモイド関数のパラメータαとβを○○と××に変更して云々」と言ったところで、多分伝わらないと思うんですよね。


できれば、そういった超弩級のデータサイエンスのスキルを持つレベル4~5ぐらいの人々のアウトプットを手元で一手にまとめた上で、それより上の(例えば)役員や統括レベルの人々に向かって「我々データ分析チームの分析結果によれば、ユーザー導線AをこのスライドにあるようなA1 / A2 / A3に細分化した上でデモグラ情報に基づいて云々」とサックリ分かりやすく伝えられる、言わば取りまとめ役兼科学コミュニケーターのようなマネージャーが必要なのでは?と僕は考えています。


賛否両論あるだろうとは思いますが、何だかんだでアカデミアでない限りはデータ分析する以上はどんな形であれ実ビジネスに貢献するべきだし、貢献すればこそその存在意義が認められ、さらなる投資を得られるものだと思っています。


僕は、アカデミアで6年間実ビジネスに殆ど繋がらないバイオの基礎研究分野で、研究予算不足、人件費不足に延々と悩まされるという苦い経験をしてきています。いかに優れた研究開発がなされていたとしても、実ビジネスに繋がらなければ誰もが苦しい思いをする羽目になるし、何よりも自社(自組織)の利益にならないということは自分の目で嫌というほど見てきています。


その意味で言えば、実ビジネスと超エキスパートたちとを結び付ける、レベル5の「マネージャー」職は今後どんどん重要になっていくのではないでしょうか。むしろ、今後はそこにもっとフォーカスした問題提起があっても良いのかな?と思っています。


・・・そうそう、僕はどのレベルに入るんでしょうね。えー、実験科学系でデータ分析手法の「ユーザー」でしかなかった身から参入してきたので、はっきり言って分野によってスキルはまだらもいいところです。レベル2のところが沢山ある一方で、無駄に組織の長をやっていた時期もあるのでレベル5的なところもありますが、「全部レベル2」と思った方が間違いないので今後とも全力で精進いたします(泣)。