先日の記事で散々「世の中のデータサイエンティスト論はことごとくポジショントークだ!」と煽っておいて何ですが。。。(笑)
色々なメディアを見ていて、あまり現実のデータサイエンティスト人材の雇用情勢って語られないものだなぁと思ったので、ひとまず僕が最近陰に陽に取材して得られた見聞に基づいてちろっと書いてみようと思います。ま、これも僕のポジショントークなんですが(笑)。そしてもっと言えばちゃんとしたデータも何もかもないんですが(笑)。
ちなみに、ちゃんとしたデータに基づいてデータサイエンティストの雇用情勢を論じた記事をid:dscaさんがお書きになってますのでそちらもどうぞ。
どちらの記事も米国の求人サイト掲載の情報などをもとに推計した結果なので多少のズレはあるかもですが、概算としては非常に良いラインを突いていると個人的には思います。
データサイエンティストの採用ブームは「2年以内に終わる」
普通に「データサイエンティスト」と名の付く職の人たちやデータ分析系ポジションの人たちと話していると、必ず出てくるのがこれ。基本的には今現在ものすごーくたくさんデータサイエンティストとかその関連職の募集は巷に出回ってて*1、時々笑える応募要件がTwitter上とかでネタにされたりするような有様ですw
ちなみにこの話題もポジショントークの意味合いがかなり強くて、「○年以内に終わる」というのは発言主によって結構変わります。概ねこんな感じかと。
- データサイエンティストに関する著述家:「21世紀の間ずっと」
- データサイエンティスト育成・資格関連の企業:「10年」
- 転職エージェント:「5年」
- 現場で働いているデータ分析者:「2年」
この辺は以前の記事でも書いたように、まずデータ分析活用という点での勝ち組と負け組とに企業が分かれていくという側面が大きく影響しそうだと思っています。
もしその二分化が進むのが遅ければ、高度な専門知識を持つデータサイエンティストへの期待感は高止まりしてくれるはず。もう少し長くデータサイエンティストを欲しがる企業の動きは続いて、データサイエンティスト求人ももう何年か続くことでしょう。「機械学習と統計学に通じていてコーディングスキルにも卓越しているプロフェッショナルが欲しい!」みたいな声は、当たり前のように色々なところで聞こえてきます。
しかし現実には二分化はかなり早く進みそうな雰囲気があります。しかも「負け組」が増えていくという形で。。。実際、早々に部署単位ながらデータ分析チームを整理統廃合したところもあると聞きます。「小難しい統計学なんか要らない、簡単な算数が出来ればいい」とトップが言い出した現場もあるという噂も聞こえてきたり。そういう現場では、高い専門知識を持つデータサイエンティストよりも、もっと汎用的なスキルセットしか持ち合わせていなくとも実務経験&ビジネス感覚に秀でたアナリストの方が重宝されるのではないか?とも予想されます。
ここからは全く定量的根拠のない業界の「雰囲気」「肌感覚」みたいな話になりますが、前者のように「もっとデータサイエンティストが欲しい!」という現場と、後者のように「もうそんな小難しいことしか出来ない連中は要らないよ」という現場との比率は、多分楽観的に見て1:2から1:3ぐらい、悲観的に見て1:4から1:9ぐらいなんじゃないかと僕個人には感じられます。
そういうことを考え合わせると、今後どんどんデータサイエンティストの採用ブームはしぼんでいくと見込んだ方が妥当でしょう。「2年以内に終わる」はそれほど間違った予想ではないはずです。
上級データサイエンティストの囲い込みが今後は強くなる
前述の件と表裏一体を成す話なんですが。。。時々データ分析コミュニティの人たちと飲み会とかで集まって、ゲスい(笑)話題になると出てくるのがこの件。
何となく想像がつく人もいるかと思いますが、一部の「有名データサイエンティスト」に関して言えば水面下ではかなりの争奪戦が繰り広げられているようです。と言うか、別に有名でなくても優秀なデータ分析人材に関してはどこから情報が漏れるのかエージェントが次々と殺到してくるというジョークみたいな状況だったり*2。
そして争奪戦が激化するにつれて、自社に実力十分なデータサイエンティストを抱えているところでは「囲い込む」動きが出始めているようです。これはあまり詳しくは書けないのですが(笑)、例えば職位の引き上げで遇するところもあれば、「対外発表など公の場に出さない」という現場もあるそうです。実際に優秀なデータサイエンティストを探し求めるエージェントが跋扈しているので、その辺の自衛策を取る企業も出てきているのでしょう。
それ以上に、当たり前の話としてそもそも多くの企業が夢想するような「データサイエンティスト」像に合致するような人材はなかなかマーケットに出回らないので、採用したら即ガッチリ確保して離さないという傾向が強まっているようです。ましてや、上述の「勝ち組」企業であればデータ分析体制をさらに強化するために「もっとデータサイエンティストが欲しい」ということで現状以上に採用を強化するところもあると聞き及んでいます。
逆に「負け組」企業からのデータサイエンティスト流出の噂も、遺憾ながら最近では聞こえてきます*3。そういう中に有望な人材がいれば、あっという間にエージェントが喰らい付いて物にしてしまうという流れもあるようで。。。
今後は一部のインハウス系と、残り大部分のシステムベンダーorコンサル系とに分かれていきそう
この辺は「勝ち組・負け組への分化」に関連しますが、つまるところ「勝ち組」は自前のデータサイエンティスト部隊を抱えてインハウスでのデータ分析体制を確立させていくものと見込まれます。
一方で「負け組」は自前のデータ分析体制を持つのをあきらめ、必要に応じてデータ分析ツールを導入したり、コンサルに入ってもらってその都度データ分析案件をやってもらう、という方向に向かっていくものと予想されます。
となれば話は簡単で、データサイエンティストたちもまた一部の「勝ち組」系企業でインハウスのデータ分析体制を担うか、残り大部分のシステムベンダーorコンサル系企業でデータ分析ツール研究開発かカスタマー向けのデータ分析コンサルティングを担う、という方向に二分化していくことでしょう。
実際、業界を見渡してみるとレコメンドシステム、webマーケティングやアドテクの隆盛に伴って多くのスタートアップが勃興しており、それらの企業の方が面白いデータ分析関連の仕事ができそうだということで流れていく人材も少なくないようです。もちろん、データサイエンティスト協会の協賛にも名前を連ねるコンサル系企業群も精力的にデータサイエンティスト採用を行っており、こちらも着々と数を増やしている模様。
先日参加してきた某カンファレンスでの参加者の発言の数々を聞いていても思いましたが、自社でデータ分析体制を整備してそれを貫徹しようという意欲のある企業は、想像以上に少ないようです。「勝ち組・負け組への分化」「インハウス系・システムベンダーorコンサル系への分化」は今後加速していくのではないでしょうか。
今ほどのブームではないが、データサイエンティスト候補の「新卒採用」は当面根強く続く
そして、これこそが実は多分どこもちゃんと取り上げてないポイント。「データサイエンティスト候補の新卒採用」が最近になってどんどん広まってきているように見受けられます。
そのパターンはピンキリながら、例えば「計算機科学or情報工学系の博士新卒」「情報工学系でプログラミングスキルに秀でた修士卒」「海外大学を卒業もしくはPh.D.を取得してきた幅広いスキルを持つ帰国新卒」辺りが人気があるようで、どこもあの手この手で採用に躍起になっているようです。少なくとも僕が直接当人と話したことがある範囲でも5例を下らないです。
ポイントとしては、彼らは基本的にはデータサイエンティスト「候補」であるという点。僕が知る範囲では、大体どこでもエンジニア枠で採用するようです。つまり、データ分析に向いているとなればエンジニア系スキルを持つデータサイエンティストのポジションに回し、あまり向いていないかもとなればごくごく通常のエンジニアとして各種エンジニア系ポジションに回す、という。いきなりデータサイエンティストとして起用するとリスクがあるかもしれないので*4、そういう「キャリアパスの保険」をかけておくことは大事かと。。。
とは言え、そういった新卒のデータサイエンティスト候補を採用し、自社内で育成するという流れはどんどん拡大している印象があります。これは上記のように保険のかかったやり方なので、当面根強く続くだろうというのが僕の観測です。
最後に
もちろんこれも僕のポジショントークかもしれないので、色々差し引いて読んで下さい(笑)。