渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「六本木で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木→渋谷駅前

データドリブンの「文化」を組織に定着させる方法とは

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(Image by Gerd Altmann from Pixabay)

ハーバード・ビジネス・レビュー本誌に昨年3月に掲載された大御所ダベンポートの記事が、昨年末に日本語版の方に翻訳されて出ていました。今年初めに目は通していたのですが、ちょうどネタ切れで記事に困っていたので昨今データ活用のための組織文化についての議論を見かけることが増えてきたので、こちらの論説の内容をザッとまとめた上でついでに個人的な経験と見聞に基づく私見もまとめてみようかと思います。


なお、元記事はまだUSでコロナ禍が本格化する前の2020年3月に掲載(つまり執筆されたのはさらにそれ以前)されたものなので、コロナ禍の影響についての言及がない点に注意が必要です。

要旨

  • CEOがデータドリブン文化の旗振り役でなければならない(=CEOの意識改革が必須)
  • 体験ベースの教育プログラムを用意すべき
  • 上級職のリーダーが率先して範を垂れる必要がある
  • データドリブン文化を推進した人に昇進や昇給などで報いるべき
  • ソフトウェアとハードウェアを用意するのみならず「文化」も必要
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非劣性検定(等価検定)をRで試してみる

この記事は、以前『統計学のセンス』を読んだ時から気になっていたことを思い出したので、単にRで試してみたという備忘録です。

非劣性検定(等価検定)の話題は、本書の最後にある8.3節「非劣性の検証とは?」であくまでも付録扱いとして登場します。ここでは、

統計学的検定は通常「有意差検定」といわれるが、

1) 標本数を大きくすることによって「医学的に有意でない差」を「統計学的に有意」とすることができる
2) 標本数を小さくすることによって「医学的に有意な差」を「統計学的に有意でない」とすることができる

という欠点があることは意外と知られていない。(同書p.143)

という有意差検定の問題点を指摘した上で、1980年代後半ごろから新薬審査に当たって「標準薬と同等程度の有効性」が検証できれば認可されるという流れが出てきたことで、積極的に同等性を検証するというニーズが出てきたという話題が紹介されています。

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『マスターアルゴリズム』は全ての人々を機械学習(人工知能)の世界へといざなう「冒険物語」

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しましま先生(@shima__shima)こと神嶌敏弘先生から、訳書『マスターアルゴリズム』をご恵贈いただきました。

本書はビル・ゲイツが「AIを知るための本」と絶賛したという"The Master Algorithm"の邦訳版で、実際に「難しい理論や数式は書かれていないがこの一冊を読むだけで現代の機械学習人工知能)の世界の全容を一望できる」優れた本だと個人的には感じました。また縦書き本ゆえいわば「読み物」的な立ち位置の書籍であり、研究者や技術者のみならずビジネスパーソンさらには一般の読書家にとっても読みやすく、尚且つ得るものの大きい一冊だと思います。


ということで、以下簡単にレビューしていきたいと思います。なお実は僕自身もしましま先生から発刊前の段階で翻訳内容の閲読を依頼されて一通り目を通していた*1という経緯がありますので、その点はCOIということで贔屓目があるかもしれない点予めご了承ください。


ちなみにしましま先生もご自身のサイトに特設ページを開設されていて、訳者の視点から各章の内容を簡潔にまとめた紹介がされています。お急ぎの方は是非そちらをお読みください。というか、こちらの方が本来の本書のプロモーションページなので、僕なんぞが以下に書き散らした書評はむしろ蛇足な駄文ですね……(汗)。

*1:特に第4章含めて「神経科学分野に関する記述のチェックをして欲しい」という依頼を頂戴していました

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