ついに「データサイエンティスト」「ビッグデータ」の語が、お茶の間にやってくる日が来たようです。
- 数字のカラクリ・データの真実 ~統計学ブームのヒミツ~ - NHKクローズアップ現代
- ノイズとシグナルの狭間で - スタッフの部屋
- ワールドビジネスサテライト7月10日「データサイエンティスト」特集 - ワールドビジネスサテライトFacebookページ
これらの放送の後のTwitterの狂騒ぶりといったら、それはそれはもう凄かったです(笑)。支持派もアンチも入り乱れて「データサイエンティスト」の連呼で、検索するとTLが溢れてしまって*1全く読み切れないという。。。
所詮すぐに消えていくただのバズワード?
ところで、支持派でもアンチでもおそらく大多数の人は「データサイエンティスト」「ビッグデータ」という語について、このように捉えているのではないでしょうか?
- まだ全然広まっていなくて、これから広まるもの
- まだ全然内実が伴っていなくて、これから内実が伴っていくかもしれないもの
- まだ言葉遊びばかりが踊っていて、これから具体的に企業に導入されていくかもしれないもの
- 結局バズワードでしかないので、数年すれば元の木阿弥になるもの
- 結局ただのバブルであり、中身なんか何もないもの
今現在の「データサイエンティスト」「ビッグデータ」の語にまつわるメディア報道やSNSでの言説などを見ていると、確かにそのように映っても仕方ないとは思います。特に、アンチ側ではかなり辛辣な意見も目立つようです*2。では、本当にそうなんでしょうか?
水面下では着実にデータ分析文化が広まり、データ分析体制を整備する企業が続出している
僕個人は、昨年末ぐらいから勤務先社内やはたまた他社のデータ分析部門の人たちと交流する機会をずっと増やしてきており*3、おかげさまで独自に色々な現場の「データサイエンティスト」「ビッグデータ」事情を聞くことができています。
その印象を以下にまとめると。。。
- 「データサイエンティストが活躍している」と公言する企業、データ分析体制を整備していると公言する企業は、実際にそのように進めている
- 特に何も公言していないが、IT化したデータを大量に持っている企業は、水面下でデータサイエンティストの起用やデータ分析体制の整備を進めている
- いずれにも当てはまらない企業は、まだ自社ではデータ分析については何もしていない
これはWeb系企業とかIT企業とかサービス業とかメーカーとかインフラと言った業態の別とは全く関係なく当てはまる模様です。既に色々なメディアでも取り上げられていますが、例えば大阪ガスさんのようにインフラ企業なのに割と早い時期からデータ分析体制を構築しているところもあるわけで。
ちなみに、各企業が取り組まなかった場合でもコンサルが入っているところではそのコンサルがデータ分析体制を整備し始めているということもあり得るので、実際にはデータ分析体制が整備され始めているところは思ったよりも多いのではないか?とも考えられます。ブレインパッドさんとか、最近メディア露出の凄いアクセンチュアさんなどは好例ですね。
なぜ「水面下で進む」のか?
データ分析体制の充実を公言している企業が、実際にそうしているというのは論を俟たないでしょう。例えば顧客へのアピールであったり、潜在顧客への注意喚起であったり、はたまた「先進的な取り組みを行っている」というブランディングのためであったり。。。
まぁ、そういうところは置いときましょう。問題は「公言せず水面下で進めている」企業。もっとも最近続々とメディアに登場する企業が増えてきているのでどの企業もいずれは「水面下」ではなくなってくるんでしょうが、それにしてもなぜ水面下で進むということになるんでしょうか。
僕が見聞した範囲からその理由を推測すると、
- データ分析体制の導入・整備・拡大自体を企業秘密として外部に洩らさないところが多い
- 仮にある程度情報を出すにしても、一般論に留めてデータ分析体制の詳細は(やはり企業秘密ということで)秘匿するところが多い
という事情があるようです。特に、冒頭で挙げたようなTV番組では「はぁ?そんなのデータ分析でも統計学でも何でもなくね???」みたいな場面が(特に企業での実践例として)出てくることがあったようですが、そういうのも結局「当たり障りのないそれっぽい例」としてTV向けに用意された演出だったのでしょう*4。同様の例は、巷に出回る「データサイエンティスト」「ビッグデータ」本にも見られるように思います。
なお、実は最近時々メディアに「データ分析に取り組む企業の例」として挙げられるところの中の人の話を聞く機会があったんですが、やっぱり公開されている内容と実際に裏で進行している実態とでは全く異なるとのことでした。
当たり前ですが、同業者同士の競争が激しいところではそもそも「データ分析に力を入れている」という情報自体がうっかりすると例えば人材引き抜き合戦などに発展する可能性すらあるわけです。言い換えると、「データ分析体制の整備に力を入れている」という情報自体が既に大きな意味を持つ局面が到来しつつあるのだと思うのです。
では、今後はどうなっていくのか?
これだけ至る所で「データサイエンティスト」「ビッグデータ」と連呼されていれば、最終的にはデータ分析を必要とする規模の企業のほぼ全てが、データ分析体制の導入を(最低でも)検討するようになるんじゃないでしょうか。
ただ、日本企業は往々にして腰が重いもの。全ての企業にその重要性が認知され、検討されるようになるまでには数年は要するだろうと僕は見ています。
その「数年」が経過する頃には、先んじてデータ分析体制を導入・整備・拡大してきた先発組の企業はいち早く成果を挙げ、まだ腰が重いままの後発組を尻目にどんどん伸びていっているのではないかと予想されます。
もちろん、色々な企業が試行錯誤に悪戦苦闘することでしょう。中には失敗するところもあるかもしれません。けれども、そもそも「データを使って何かに役立てる」というやり方自体がこれまで企業の世界ではそんなに広まっていなかったわけです。少なくとも、何かしらの変化がビジネスの世界に起きることは間違いないでしょう。
そういうわけで、どこが先発組として勝利を収めるか?後発組として敗退するか?という「水面下のデータ分析戦国時代」がこれから始まるんだろうなぁ、と僕は予想しています。僕もある意味既に参戦しているわけで(笑)、頑張らなきゃいかんですね。