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六本木で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「銀座で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木

「日本型データサイエンティストの登場を契機に活用が進展」記事について二言三言

先日、Twitter上&FB上にこんな記事が出回っていたので読んでみました。

データ分析をビジネスに活用するためには、高度なデータ分析の専門家である「データサイエンティスト」の存在が不可欠だとNRIでは認識している。しかし同社の調査によると、現時点では、日本企業で社内にデータサイエンティストがいる企業は8%程度と、ごく一部。今後、現場力とコンサルタント的スキルを持つ「日本型データサイエンティスト」登場し活躍することで、データ分析がビジネス展開に大きく貢献する成功事例が、徐々に現れてくると予測する。


また、米国で設置が進むCDO(チーフ・データ・オフィサー:最高データ責任者)やCAO(チーフ・アナリティクス・オフィサー:最高分析責任者)を擁する日本企業が増え、データの管理、分析、展開に関する全社的なルールによるガバナンスの下で、既存の業務改善の域を超える戦略的なデータの活用が進むと予想する。


データサイエンティスト養成コースとかのビジネスをしている人には嬉しいレポートかもしれませんが、実際にはどうなんですかね。ということで、いつも通り一切の定量的根拠ゼロながら自分の業界内での見聞談に基づいて*1ちょっと色々コメントしてみようと思います。


日本型データサイエンティスト→知る限りでは本場USも同じような感じらしい。

「日本型データサイエンティスト」は、一般的なデータサイエンティストのように、「高度なデータ分析力を持った専門家」というだけではなく、ビジネス現場での「課題解決に向けた仮説」を立て、それを「データ分析で検証」し、「事業部門に実行を働きかけ」ていく、現場力を持った存在である。


もしかしたらどこぞの内容の薄い本に引っ張られたのかもしれませんが、そもそも「データサイエンティスト」の概念を初めて世に広く知らしめたThomas H. DavenportのHarvard Business Reviewの論説*2には、既に当時LinkedInやFacebookに出現し始めていた本場USのデータサイエンティストたちを念頭に、データサイエンティストがビジネスの現場でどのように活躍しているかが綴られています。


ということで、日本型だろうと一般だろうとUSだろうと、データサイエンティストと言ったら「ビジネスの現場でビジネスに貢献する存在」とみなして良いのではないかと思います。むしろそうでないデータサイエンティストなるものを挙げるなら、一般とか日本型とかそういう問題ではなく、それはビジネスとは関係のない学術的な基礎研究活動に従事する研究者や学者なのではないかと。


余談ですが、このDavenportの記事には「何故データサイエンティストは『サイエンティスト』と呼ばれるべきなのか?」についても書かれています。この辺の話は別にエントリを立てて紹介しようかなと。


データサイエンティストがいる日本企業は8%から増えるか?→たぶん増えない。


もうこの手の話はここでも散々してますが、データサイエンティスト・ブームは2年後(どころかひょっとしたら半年後)にはバブルが弾けて終わると思ってます。


そこで起きるのは、データサイエンティストの中途採用ブームの終了と、他業種からのデータサイエンティストへの転身ブームの終了。今後は新卒データサイエンティスト候補に対する、(エンジニアなどに移行する可能性も見ながらの)継続的な育成がメインになっていくのではないかと。ただしそれもおそらくごく少数。そしてそんな取り組みをする企業は「今現在データサイエンティストがいる」ところのみでしょう。


なので、「8%」という数字はたぶん今後も増えません。ただし「新たにデータサイエンティストという職種を導入する企業」と「データ分析体制を自社で持つのをやめて*3データサイエンティストという職種を廃止する企業」とが同数ぐらいになって、顔ぶれが入れ替わりつつ「8%」という数字をキープするような状況は起き得るかなと予想してます。


CDOやCAOは今後日本で増えていくか?→今現在データサイエンティストのいる企業では設置するようになる。


結論から言うと、今現在データサイエンティストがいて、なおかつ社内での存在価値が高まり続けているような状況であれば、どの企業でも最終的にはCDOやCAOといった責任者は置かれるようになるというか置かざるを得なくなると僕は考えています。


理由は単純で、僕が見聞している範囲ではインハウスでデータサイエンティストを置いているようなところだと、どうしてもデータ分析のリソースが分散しているとロスが多いということで必ず「統合したい」という話が出てくるものと、相場が決まっているからです。例えば、web企業などで複数のサービス間でユーザーを回遊させたいとか考えた場合には当然サービス間でデータを融通する必要があるわけですが、これを毎回別々のシステムから取ってくるとかやってると大変なわけで。。。普通はそういうニーズが出てきた時点で「統合」に向かうものです。


実際、中には既に社内のデータ分析体制全体の統合に向けて舵を切り、CDOやCAOとは明示していなくてもそれに類する責任者を据えている企業もあると聞きます*4。今後この流れはじわじわと広がることでしょう。


現段階ではまだまだデータ分析がもたらすインパクトは限定的かもですが、今後ひとつの会社全体の命運を左右するほどのインパクトがデータ分析からもたさらされるようになれば、自ずと社内統合の動きは加速し、CDOやCAOといった責任者を据えるところが「データサイエンティストを既に置いているような企業」に限って増えていくだろうと予想されます。


なお当たり前ですが、データサイエンティストのいない企業でCDOやCAOを置くことはまずないと思います。ってか、そういう企業でそれを思い付く人っているんですかね?


全社規模で戦略的にデータを活用する日本企業は増えるか?→今現在データサイエンティストのいる企業に限って増えていくだろう。


これも結局CDOやCAOの話と全く同じで、要はデータ分析が事業をまたいでビジネスにインパクトをもたらすようになれば、否応なしに全社規模でデータ活用を統合させる動きは強まらざるを得ないでしょう。


その意味で言えば、やはり「データサイエンティストを既に置いているような企業」に限って全社規模でデータガバナンスを整備して、全社的にデータ活用するようなところが増えていくだろうという予想が立つはずです。


ただし、この過程で誰がorどの部署が最終責任を負うかなどを巡って揉める企業は結構出てくるんじゃないかと思います。。。そこでCDOやCAOのような一元的に責任を負えるだけの人材をそれ相応の立場に就かせることができれば良いのですが、それに失敗して「コケる」ところも出てくるかも。


結論→横には広がらないが、縦には深まっていく。


ということで、まさに「データサイエンティストのカルチャーは横には広がらないが縦には深まっていく」だろう、というのが個人的な予測です。


今回の予想記事とは裏腹に、5年経ってもデータサイエンティスト制度を初めとするデータ分析体制をインハウスで導入する日本企業はたぶんそれほど増えないだろうし、あまつさえインハウスで維持するのを諦めてコンサルへの委託に切り替えるところも出てくる、というのが前々からの僕のドライな読みです。


ただ、例えばFacebookの事例*5などを見ても、データ分析体制の導入でうまく回っているところはいずれ全社的にデータ分析の枠組みを統合しようとするのがほぼデフォルトになっています。その動きに洋の東西の差はない模様で、おそらく日本でも今後はそうなっていくことでしょう。


以上のことを鑑みるに、むしろ「データ分析の勝ち組・負け組二分化」は今後さらに強まるんじゃないかなーというのが今回の結論です。むしろそこの二分化のプロセスを追っていった方が面白いんじゃないかな、と思ってます。


追記1


ということで一部の「勝ち組」以外の多数派企業はデータ分析を外注するようになり、全体としてデータ分析コンサルへの傾斜が強くなるというのが僕の予想ですが、コンサル側の状況は寡聞にして疎いので今回は割愛します。そのうち取材が進んだらまた何か書くかもです。


追記2


id:dscaさんから言及をいただきました。


ブームに対して否定的な側からのコメントですが、なかなか穿ったところを突いていらっしゃいますねー。僕は楽観派なのでもう少しポジティブに見ていますが、それでもCDO・CAOはよっぽど自分の能力とスキルと経験に自信のあるデータ分析&ビジネス双方の実力者*6でなければ、なるもんじゃないとは思ってます。


ちなみに、折衷案として社長室とかCTOの直下にデータ分析部門を据えるところはチラホラあるみたいですね*7。そちらの方がまだ現実的かも。


個人的には、いつかそういう職位に就いてみても良いかなーとは思ってます。何事もチャレンジだし、詰め腹切らされることになったらまた新天地を探せば良いだけのことなので。5つの職を渡り歩いてきた身には、怖いものなんてないですからねー。

*1:つまりポジショントーク含んでるかもなので要注意(笑)

*2:HBRは無料会員登録をすれば月に4記事まで有料コンテンツを読めます、ご参考までに

*3:外部のコンサルなどにデータ分析案件を投げるところが増えるという意味

*4:楽天の北川さんがまさに恒例かと→ http://www.nhk.or.jp/jirenma/guest_kitagawa_takuya.html 実は今春の転職活動時に色々とお話する機会があったのでした

*5:FacebookCDO / CAOではありませんが、CMO (Chief Marketing Officer)を置くようになっていて事実上データ分析体制を束ねています

*6:データ分析「も」超一流である必要あり

*7:というか前職では途中までそうでした