渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「六本木で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木→渋谷駅前

『ウェブ最適化ではじめる機械学習』はモダンなUI/UX改善の枠組みを学ぶ上で至適の一冊

こちらの書籍を著者の飯塚修平さんからご恵贈いただきました*1。テーマとしてはウェブ最適化即ちいわゆるUI/UX改善で、そのアプローチについて包括的にまとめた内容です。ちなみに本書は著者ご自身の修士・博士論文の内容に沿ったもので、いわば大学院での研究の集大成とも言えるものなのだそうです。


と書くと、いかにも「ガッチガチの研究」本に見えるかもしれませんが、引用されている事例などには一般のユーザー・消費者でもある我々にも馴染み深いものが多く、意外と取っ付きやすい内容だなと個人的には感じました。また、A/Bテスト・バンディット・ベイズ最適化とそれぞれ個別に専門書が書かれることが多く、別々に学ぶ羽目になることになりがちなテーマが、ウェブ最適化という実務的な一貫したテーマのもとでまとめられているのも優れた点だと思います。そして、何よりもNumPy / PyMC3によるコード例がふんだんに盛り込まれている点が、優れて実践的だと言えるでしょう。


ということで、一通り読んでみた範囲で簡単に書評を書いてみようと思います。なおいつもながらの話ですが、明らかに誤読や誤解釈が疑われたり、僕自身の勉強不足に由来すると思われる不適切な評がありましたら、コメント欄などでご指摘くださると有難いです。

*1:なお飯塚さんは現在の勤務先の同僚であることを予め申し添えておきます

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VARそして時系列因果性分析の復習

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新型コロナウイルス感染症における治療の進展(令和2年10月29日に開催された第13回新型コロナウイルス感染症対策分科会事務局提出資料を基に内閣官房・内閣府作成)」という資料が世間で物議を醸しているようです。ただ、これを見ていて僕が個人的に気になったのは、その議論の内容や結論ではなく、「グレンジャー(Granger)因果」が使われているという点でした。


Time Series Analysis

Time Series Analysis

以前このブログでも一通り計量時系列分析を取り上げて一生懸命沖本本やHamiltonで勉強しながらシリーズ記事を書いたものですが、その時の記憶から言えば「Granger因果ってそんなに軽い気持ちで使って大丈夫な代物だったっけ?」という印象を強く受けたものです。そこで、今回の記事では以前のブログ記事から要所要所を抜粋しながら、Granger因果を含む時系列因果性分析がどんなものであるかを復習し、その上で冒頭に紹介した資料で行われている分析の妥当性について考察してみようと思います。


いつもながらですが、僕の計量時系列分析に関する知識は中途半端な点が多く記事中には誤りや理解不足が含まれている可能性がありますので*1、お気付きの方はどしどしコメント欄などでご指摘下さると有難いですm(_ _)m

*1:そもそも一生懸命勉強していたのがもう7年も前なので色々と記憶が曖昧になってきている

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実験科学の考え方を転じて「ビジネスサイエンス」にする

先日までこちらの書籍を読んでいました。ここ数年「ワークマンのすごいデータ活用」としてそのデータ活用事例が大いにクローズアップされてきたワークマン社ですが、その裏側を取材した本書を読むとデータ活用も凄い一方で、それ以外の部分も凄いところだらけという印象があります*1


その詳細については本書を実際にお読みいただくとして、今回の記事ではその中から僕が特に強いインスピレーションを覚えた箇所にフォーカスを当て、そこから今後の「データサイエンス」がどうあるべきかを個人的に考察してみようと思います。


先にこの記事で言いたいことを簡潔にまとめてしまうと、「これからは『データサイエンス』というよりも実験科学の考え方を転用した『ビジネスサイエンス』が重視されるべき」というものです。これまではビジネスシーンにおける「データサイエンス」が重視されてきましたし、それが故の狂騒を見かけることも多いのですが、最近になって「データ」サイエンスというよりも、もっと包括的で科学的なアプローチが重要なのではないかと感じる局面が増えており、その一つとして「実験科学的な取り組み」*2への理解がもっと広まるべきだという感想があります。これをあえて「ビジネス」サイエンスという語で括れないか?というのが、今回の記事のもう一つの主題です。

*1:そう言えば某所で「いやOpenWorkの口コミ見てみろよ」というツッコミが飛んでいるのを見かけましたが、見なかったことにしておきます

*2:ここには統計的因果推論なども含まれる

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