私は、数学や計量経済学をやってきたような地頭のいい人材に、是非我々のマーケティングコミュニケーションの世界に入ってきて欲しいと思っている。こうしたことが出来る頭脳は、従来の広告屋を鍛えてどうにかなるレベルではなく、「データ取扱い者免許」みたいのを持っている人に、「広告コミュニケーションって面白いでしょ?」「このベースラインというブランド力みたいな訳の分からない部分を可視化してみないか?」のような甘言を用いてこちら側の世界に連れ込みたいと思っている。
(ブランド力の可視化とデータサイエンティストを「口説く」こと)
大変面白いブログ記事を拝読しました。ええ、これものすごく大事なことだと思います。「データ取扱者免許」というキーワードもなかなかにキャッチーで良いですね。今度からぜひこの表現拝借して色々なところで使わせて頂こうと思います(笑)。
なお、僕は「地頭」という言葉にはどちらかというと否定的なのですが*1、アカデミックな学識を学んできている人材が(従来のビジネスパーソンに比べて)ビジネスの世界にはないスキル・能力を持っているというのは(一応)事実なので、それらを活かすべきという提案には大賛成です。
そもそも、僕自身がアカデミアからITデータサイエンス業界に転じた変わり種なので、このようにアカデミックなエキスパートをもっとビジネスの世界で役立てようという提案は賛成どころか大歓迎と言いたいところです。
・・・ただ、問題はどうしたらそんな人材をアカデミアから引っ張ってこれるか?というところでしょう。
僕自身がアカデミアでポスドクをしていた経験があるので知っていることですが、かなりの数の大学教員なり若手研究者なりポスドクなりが
- そもそも民間企業で金儲けなんて賤しいことはできない
- 「マーケティング」なんて品のないことはしたくない
- アカデミアを辞めて民間企業に行くのは、出世競争に敗れて都落ちするみたいで嫌だ
と、本気で思っているように見受けられるからです。ちなみに、僕も民間企業就活を始めるまでは、それに近いことを思っていたことがあります*2。もちろん今はそんなことは微塵も思いませんが。。。
なので、
「広告コミュニケーションって面白いでしょ?」「このベースラインというブランド力みたいな訳の分からない部分を可視化してみないか?」のような甘言
ではなかなか象牙の塔の中に籠っているデータサイエンティスト候補を、マーケティング業界に引っ張り出すのは難しいと思います。
正直言って、アカデミア側の構造改革が進まない限り、今の細々としたペースを加速させてアカデミアからエキスパートを引っ張ってくるのは非常に困難だと思いますが、一つだけ案を挙げるとすれば
ガチのサラリーの金額と待遇を先に示す
のが手っ取り早いと思います。何故なら、アカデミアの人々の大半は、民間企業での待遇が実際にどれくらいかを殆ど知らないからです*3。
それでも全く動かない人が圧倒的多数派だろうと予想しますが、昨今のポスドク問題なり予算&人件費削減問題のさなかにあっては、ごく少数の賢明な人々は興味を示すかもしれません。あえて狙うならそこですね。
ともあれ、こうして象牙の塔の中に籠り世間に埋もれている人材に、スポットライトが当たるのは大変良いことだと僕は思います。
個人的な印象では、今やデジタルマーケティングを初め、ITデータサイエンスの世界こそが社会の最先端になりつつあると感じています。そこに、少しでも多くの特殊能力・スキルの持ち主たちが参戦してくれれば、もっともっと社会は便利になって豊かになるんじゃないかと期待する次第です。
余談ながら、実は弊社でも現在とあるITデータサイエンス部門で「博士ポスドク可」「業界経験不問」の求人を出しています*4。そういう時代になりつつあるのだな、と個人的には感慨深く思ってます。