渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「六本木で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木→渋谷駅前

PyMC Marketing MMM:オーソドックスな実装のベイジアンMMMライブラリ

だいぶ食傷気味の方も多いかもしれませんが、懲りずに今回もMMM (Marketing/Media Mix Modeling)ネタをやります。この度取り上げるのはこちらです。

そう、PyMC Marketing MMMです。あくまでも僕の観測範囲ですが、広く普及しているPyMCベースなのもあってか、群雄割拠するMMMライブラリの中でも比較的広く支持を集めているように見受けられます。


MMMは歴史の長いマーケティング分析手法で、その実装方法もそれに応じて多岐に渡りますが、近年ではJin et al. (2017)に準拠したベイジアンMMMが主流になりつつようです*1。そのオリジナル実装は僕の勤務先では社内版として利用できますが、それをJAX + NumPyroで再実装したのがLightweight MMM*2、そしてそこに色々なコンポーネントを追加して全面的にTensorFlow Probabilityで実装し直したのがMeridianです。


なのですが、先日の記事でも触れた通りMeridianには既存実装には見られない独特のfeatureが多く、時にはユーザーを困惑させることもあるようです。このためJin et al. (2017)により忠実な実装を求める声も少なくないようで、その代表格としてPyMC Marketing MMMが挙げられることもまた多いと伝え聞いています。


ということで、今回の記事ではそのPyMC Marketing MMMがどんなものかを公式のEnd-to-End Case Studyをなぞりながらレビューしてみようと思います。なお、今回ご紹介するコードは独立に取得した実データに対しても回ることを確認していますが、後述する事情もあり、芸がないのは承知の上で配布元指定のオープンデータを用いています。

*1:完全にポジショントークですがご勘弁を

*2:今年1月でメンテ終了

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MMMライブラリ "Meridian" の使い方・特徴・注意点まとめ

麗々しく自社プロダクトについてのまとめ記事を書くのは若干気が引けるのですが、先日Gemini 2.5 Proにvibe codingということでMMMのサンプルコードを書かせてみたら既にsunset済みのLigthweight MMMを使ったコードが返ってきた上に、よりにもよってこのブログのLMMM紹介記事を参照してくるということがありまして*1、これはいかんということでこのブログでもMeridianの紹介記事を書くこととしました。


Meridianそのものについては公式サイト・ドキュメントやGitHubリポジトリに既に公式のきちんとした説明が沢山ありますので、この記事ではMMMの実務家にとって重要そうなポイントに絞ってご紹介していこうと思います。

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『因果推論』(金本拓:オーム社)は因果推論に留まらず現代的なマーケティング分析手法まで網羅したバイブル

著者の金本さんからご指名でご恵贈いただいたのが、こちらの『因果推論 ―基礎から機械学習・時系列解析・因果探索を用いた意思決定のアプローチ―』です。正直に白状しますと、因果推論とタイトルにつく技術書はここ数年でゴマンと出版されており、本書も紙冊子で頂戴したものの僕はあまり期待せずにページをめくり始めたのでした(ごめんなさい)。


ところが、ほんの数ページめくっただけでその内容に僕は仰天しました。グラフィカルで実務家にとっての分かりやすさを重視した因果推論の解説と実践にとどまらず、現代的なマーケティング分析では必須の種々の手法についてまで懇切丁寧に解説とPythonによる実践例が付された本書は、文字通りマーケティング分析実務家にとってのバイブル」になり得る素晴らしい一冊だと直感したのです。


こんな素晴らしい本が世間に広まらないのはあまりにも勿体無いということで、早速レビューしてみようと思います*1。なお、いつもながらですが記述内容に理解不足や誤解などに基づく不備な点がありましたら、何なりとご指摘下されば幸いです。

*1:実は以下に揚げる図表をコピペしたいというだけのためにKindle版を別に私費で購入しています

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