六本木で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「銀座で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木

日本の人工知能バブル、いよいよ弾けるか?

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このブログでは定番のマーケットトレンド調査ですが、今回は若干雲行きの怪しさを感じさせる結果が得られたので取り急ぎシェアしておきます。ちなみに言うまでもなくこの調査は僕自身の個人的なものであり、この記事で述べられている見解はいかなり組織にも関係はなくまたいかなる組織をも代表しないものであることを予めお断りしておきます。


Googleトレンドで見る限りでは「人工知能」は既に幻滅期に突入、「機械学習」も踊り場に入るか?


冒頭のプロットのスクリーンショットでお見せした通りですが、Googleトレンドで見る限りでは

  • 人工知能」:2016年5月中旬を境に上昇トレンドから下降トレンドに転じる
  • 機械学習」:2018年8月現在も上昇トレンドを維持しているように見えるがトレンド自体は鈍りつつあるように見える

という印象があります。「人工知能」に関して言えば、既にガートナーのハイプ・サイクルで言うところの「幻滅期」に突入していると見て良いのではないでしょうか。明らかに頂点を過ぎ、どんどん下がっていくように見受けられます。


一方で「機械学習」は解釈が悩ましい感じです。まだまだ上昇トレンドを維持するようにも見えますが、二階微分(つまり加速度)という観点から見れば上昇トレンドの勢いが鈍ってきているようにも見えなくもないです。


なお、余談ですが「AI」で見ても下降トレンドの開始時点が異なる(2017年12月中旬)だけでやはり下降トレンドに転じているように見えます。ただし「AI」は他のコンテンツを意図した検索も多い模様で、このキーワード単体のトレンドを見ても正確でない結論に至る可能性があります。


ベイズ構造時系列モデルで予測すると「人工知能」は下降トレンドのまま、「機械学習」は上昇トレンドを維持



というような、主観的印象ばかり書いても仕方ないので普通にRの{bsts}パッケージを使ってトレンド付き時系列の短期予測をやってみましょう。使い方は以前の記事に書いた通りです。面倒なので一階差分線形トレンド(ローカル線形トレンド:単位根過程と基本的には一緒)ありモデルで推定してみます。共変量はここでは度外視しました。

> library(bsts)
> train_ai <- as.vector(d$AI)
> ss_ai <- AddLocalLevel(list(), train_ai)
> ss_ai <- AddLocalLinearTrend(ss_ai, train_ai)
> model_ai <- bsts(train_ai, ss_ai, niter = 1000)
# 中略 #
> pred_ai <- predict(model_ai, horizon = 26, burn = 100)
> train_ml <- as.vector(d$ML)
> ss_ml <- AddLocalLevel(list(), train_ml)
> ss_ml <- AddLocalLinearTrend(ss_ml, train_ml)
> model_ml <- bsts(train_ml, ss_ml, niter = 1000)
# 中略 #
> pred_ml <- predict(model_ml, horizon = 26, burn = 100)
> plot(pred_ml)
> par(mfrow=c(2,1))
> plot(pred_ai, ylim = c(-75, 150)
> plot(pred_ml)

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ということで、「人工知能」はやはり今後は下降トレンドが続く一方、「機械学習」は一旦は上昇トレンドを維持するという結果になりました。少なくとも「人工知能」に関してはこれから幻滅期に突入すると見て良さそうです。


今後どうなるのか?


ここからは定性的*1な話になりますが。。。これまでのところ「人工知能」「AI」という言葉は良くも悪くも「一般世間受けの良い言葉」であり、技術系メディアのみならず一般メディアはもちろんのこと娯楽向けコンテンツや人工知能とは何の関係もないような新製品の説明書きにまで溢れるようになっており、言い換えると「バズワードとして消費され尽くしている」状態のようにも見えます。


一方で、バズワードとして消費される勢いに比べると「実際の人工知能*2」が社会そして市場に浸透する勢いは鈍いままです。そこには研究者・技術者が不足しているという側面もあるかもしれませんが、同じくらい「『人工知能』を導入する側が実態を理解しないまま無理やり導入を図って失敗する」という事態がそこかしこで相次ぎ、ある種の失望を招いている部分もあるように見受けられます。この辺の状況は以下の記事でも取り上げた通りかなと。


その意味で言うと、まさにガートナーのハイプ・サイクルで言われている通りの「技術は過度な期待に応えられず急速に関心が失われ、『幻滅のくぼ地』に入る。そしてメディアはその話題や技術を取り上げなくなる」という幻滅期に「人工知能」は近付きつつあるというか、ところによっては既に突入しているのではないかと考えられます。実際「人工知能導入」を目標に掲げたチームを鳴り物入りで作ったものの、うまくいかずに解散したという企業の噂もぽつぽつ出てきており、難しいなと思う次第です。


ただ、冒頭のプロットからはもう一つ面白いポイントが読み取れます。それは、「人工知能」の人気に「機械学習」が追い付きつつあるということです。言い換えると、単なるバズワードとして消費される「人工知能」というビッグワードを尻目に、堅実な学術・技術体系としての「機械学習」への関心が年々高まり続け、いよいよ肩を並べるところまで来つつあるということかと。それは、ともすれば上っ面にしか関心を持たない世間とは異なり、機械学習に関心を持ち研究開発や実装を進める研究者や技術者のコミュニティが年々大きくなり続けているということをも反映しているように僕には見受けられました。


個人的には、これからも「機械学習」が地に足のついた発展を続けていくことを期待したいと思います。もっともその成長率には鈍化が見えなくもないので、今後もしばらくモニタリングを続けるつもりです。


余談ですが、アメリカでも"Artificial Intelligence"の勢いは失速する一方で、"Machine Learning"の勢いは伸び続けています。世間がバズワードで騒ぎ終わった後から、じっくりと実態のある堅実な学術・技術が伸びてくる、という構図はもしかしたら洋の東西であまり変わらないのかもしれません。と、いう適当な内容の与太記事でした。


余談


去年の記事で予言してました(笑)。

この人工知能ブームがいつまで続くのかは僕には分かりませんが、2年で幻滅期に突入したデータサイエンティスト・ブームと同じ道をたどるならおそらく来年2018年には同じように萎むのでしょう。

*1:業界ドメイン知識に基づくとも言う

*2:ここでは「弱いAI」すなわち機械学習などの技術をベースにした特定目的のための実用化されたものを意味する