渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「六本木で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木→渋谷駅前

我が家の我流インドカレーレシピ

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時々色々なところで写真を披露していますが、僕の15年以上に渡る趣味の一つにインド料理があります。元はと言えば偶然通うようになったインド料理屋が実は日本国内のインド料理業界との関わりの深いお店で、そこで教えていただいた知識をもとに様々な都内の有名インド料理屋を巡ったり、はたまた所縁のあるインド料理研究家の方のレシピ本を読むようになったりして、今ではインド料理は食べ歩くのも自分で作るのも同じくらい好きという有様です。


そんなわけで、これまた時々インドカレーのレシピを教えて欲しいというリクエストをいただくことがあり、我流で恐縮ですが恥を忍んで(本来のブログの趣旨とは完全に異なりますが)我が家のレシピを書いてみることにしました。ただ、以下に記すレシピは完全に我流で正統なものではないので、正統派のレシピの載っている参考文献を併せてご紹介することとします。

最低限のインド料理の基礎知識


詳細は最後に紹介する2冊の本をお読みいただくとして、ここでは最低限これだけは知っておくべきというインド料理の基礎知識を書いておきます。全て書籍や各種記事からの受け売りにつき、現地体験や僕自身の研鑽によるものではないのでご了承くださいm(_ _)m


まず、インド料理特にカレー*1の味は原則として「辛味・酸味・甘味」の3要素から成ります。それぞれの要素を何で作るかは本当に千差万別かつ好みの問題で、例えば辛味はカイエンペッパー・ブラックペッパー・青唐辛子などで作ることが多いです。酸味はトマトが主流ですが、ヨーグルト*2タマリンドはたまたレモンなどでも作れます。甘味も炒め玉ねぎが主流ですが、他にもココナッツミルクやカシューナッツペースト、変わったところだと砂糖でつけることもあります*3。また、必ずしもカレーだからと言って全てターメリックを入れて黄色くするとは限らず、南インドなどでは白いカレーもあったりします。


次に、北インド南インドとでインド料理は割とはっきり分かれます。北インドでは気候上小麦がよくとれるので、自然とチャパティやロティそしてナンのような「パン」に合うタイプのカレーが好まれ、概してトロッとこってりとした濃厚なグレービーのカレーが多いです。玉ねぎの使い方も、どちらかというと深炒め、揚げ炒めもしくは本当に揚げてしまうことで濃厚に仕上げるという印象が強いです。隣接するパキスタンアフガニスタン・ネパールもこちらの文化圏に入ります(ただしネパールは稲作が盛んであると同時に仏教徒も多くかつチベットと隣接する地域のためダルバートモモなど独自の食文化がある)。


一方、南インドでは稲作が盛んなので、自然と「ライス」に合うタイプのカレーが好まれ、さらりとしたスープ的なグレービーのカレーが多いとされます。玉ねぎも浅炒めで済ませる代わりに甘味をココナッツミルクで加え、全体としてあっさりとした味わいにすることが多いようです。隣接するスリランカ、そしてバングラデシュも稲作が盛んなことから似たような食文化を持ちます。


ただし、北インドでもライスは食べますし、逆に南インドでもパンは食べます(パラタやプーリなど)し、また北インドでもサラサラのカレーを作るので、完全に排他的ではない点に注意が必要です。さらに、歴史の長い多民族地域だけあって南北それぞれの中でもさらに地域ごとに細かく分かれて独自の食文化を持っています。例えばゴアではキリスト教徒が多いことから豚肉*4が食べられていたりします*5。またベンガル地方ケララ・マンガロールなど西海岸地域などでは魚のカレーが広く食べられているようです。


また、インドというとノンベジタリアンベジタリアン*6とで料理が厳格に分かれていることがよく知られているかと思いますが、ノンベジだからと言って毎日肉や魚を食べることはほぼなく、大抵は週1回ぐらいしか食べないそうです*7。なので実は野菜カレーやムング・ダルのようなひき割り豆を煮込んだ豆カレーの方が現地ではずっと一般的とのこと。例えば南インド料理だとサンバルラッサムといった、いわゆるミールスに合わせていただく野菜カレーが有名です。またイスラム教徒なら牛肉を食べても戒律上は大丈夫なのですが、やはりヒンズー教徒の目があるのでビーフカレーはインド国内では限定的なようです*8。代わりにマトン(ラム)が食べられるのだと理解しています。


余談ですが、日本でインド料理というと定番のナンやタンドゥーリチキンなどのタンドゥール窯を使った料理は、実際には北部のパンジャブ州周辺に由来するムガール帝国宮廷料理(ムグライ料理と称される)の流れを組むものなので、それ以外の例えば南インド料理などでは基本的には出ません。実際、都内には南インド料理専門店ということでタンドゥール窯を置かずナンも出さないところがいくつかあります。その代わりナンに匹敵する南インド料理の名物を挙げるとすれば、個人的にはドーサかなと思います。


我が家のレシピ


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それでは、我が家のレシピを紹介していきます。準備する上で一番大変なのは、おそらくスパイス。1回こっきりしか作らないのであれば成城石井などの高級スーパーで手に入るような小さいポーションのものを都度揃えても良いかと思いますが、定期的に作るのであれば上野アメ横・大津屋さんの通販を利用するのがお手軽かつ確実です。


ところで、以下に紹介するレシピでは「玉ねぎは深炒め」なのに「ココナッツミルクとブラウンマスタードシード」を使っています。つまり北インド料理と南インド料理を混ぜた作り方なのです。これは単に僕が両方のいいとこ取りをしようとして定石を外して邪道なカレーを作っているだけですので、何卒悪しからず。

用意するもの


ここではチキンカレーと野菜カレーを作るものと想定します。揃えるものは基本的には具材とスパイス、それに主食です。主食はパンでもライスでも良いですが、パンならちょっとパリパリとした食感のものが、ライスなら日本米だと十五穀米など雑穀米が、インディカ米なら本場バスマティ米*9がお薦めです。チャパティは殆ど作ったことがないので、そのうち試してみたいです。面白いところでは、冷凍食品のパラタ(南インドのパン)を合わせたことがあります。

具材

3-4人前と想定して、以下の通り。

  • 鶏もも肉*10:250-300g
  • 野菜類(写真の例)
    • オクラ:1袋(10本)
    • パプリカ:1/2個
    • 茄子:2個
  • 香味など
    • たまねぎ:1個
    • カットトマトorホールトマト:1缶
    • にんにく:4-5かけ
    • しょうが:1/2個
    • 青唐辛子*11:1本
スパイス及び調味料

3-4人前と想定して、以下の通り。

  • ホールスパイス*12
    • クミンシード:小さじ1
    • ブラウンマスタードシード:小さじ1
    • シナモンスティック:1/2本
    • ローリエベイリーフ):1枚
    • クローブ:3粒
    • 鷹の爪:1本
    • グリーンカルダモン:3粒
    • ブラックペッパー(ホール):10粒程度
  • 調味料
    • 食塩:小さじ1+α
    • ココナッツミルクパウダー:大さじ2-3
    • サラダ油:適量
    • ブラックペッパー:ミルで挽けるもの

作り方


以下順を追って書いていきます。

下ごしらえ
  1. 玉ねぎはみじん切りにする。細かく刻めばトロッと濃厚に仕上がりやすくなる
  2. にんにくとしょうがはすり下ろす
  3. 青唐辛子は小口切りにする
  4. 野菜は一口大に切る。なお時間を節約する目的で先にシリコンスチーマーに入れてレンジにかけて火を通しておくという手もある
  5. ココナッツミルクパウダーは熱湯で溶いて100-200mlぐらい用意しておく
  6. 鶏もも肉は一口大に切っておく
調理
  1. 厚手の鍋にホールスパイスのうちブラウンマスタードシード以外を全て入れ、サラダ油をひく
  2. 鍋を強火にかけ、クミンシードがチリチリと言い始めるまで熱する
  3. 十分に熱したら、ブラウンマスタードシードを入れる
  4. ブラウンマスタードシードがパチパチ言って弾け始めたら、みじん切りにした玉ねぎを入れて手早く炒める
  5. 玉ねぎの端に焦げ目がついて飴色に近づいてきたら、青唐辛子→にんにく&しょうがの順に入れてよく混ぜる
  6. 焦げ付く前にカットトマトとココナッツミルクを注いで、よく混ぜる
  7. 沸騰してくるまでしばし待つ
  8. 沸騰してきたら弱火にし、パウダースパイスをターメリック→カイエンペッパー→コリアンダー→食塩の順に入れる*13。ただし毎回入れるごとに都度丁寧にかき混ぜて再沸騰するのを待つ
  9. 全て入れたら、しばらく弱火のまま油分にカイエンペッパーの赤い色が乗り移ってくるのを待つ(色のついた油が浮いてくるので見れば分かる)。水は基本的には入れない*14。ここでグレービーが出来上がる
  10. 色のついた油が浮いてきたら一旦火を止め、全体量の1/3程度を別の鍋に移す
  11. 1/3量の鍋には野菜を入れ、2/3量の鍋には鶏もも肉を入れる
  12. 野菜の鍋は蓋をしてしばらく強火にし、蓋から蒸気が漏れるようになったら弱火にしてそのままじっくり煮込む(焦げ付きに注意)
  13. 鶏もも肉の鍋はしばらく強火にしたままよくかき混ぜて炒め煮に近い形で煮込む(肉にグレービーを染み込ませるため)
  14. 鶏もも肉に大体火が通ったら、ブラックペッパーをミルで挽いて好みの量を入れる*15
  15. 5-10分ほど鶏もも肉も煮込めば、出来上がり
バスマティ米について

日本米と同じように炊飯器で炊けます。が、水の量は基本的には「バスマティ米の重量の4/3倍の重量」入れてください。バスマティ米90gなら水120ccで炊く感じです。


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これはパンを合わせた例です。

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バスマティ米を合わせるとこんな感じになります。


以前は南インド料理に凝ってサンバルとラッサムとバスマティ米だけみたいなベジタリアンな献立ばかり作っていたこともあれば、頑張ってバターチキンやアル・ゴビ*16やアル・パラク*17のようなカレーを作ったこともあれば、後述する『カレーのすべて』に載っているベジ・カバブや『カレーな薬膳』に載っているポリヤルといった料理を作っていたこともあるんですが、最近は専らこのグレービーをベースにしたノンベジのカレーしか作っていません。何だかんだで定番の味ということになっています。


インド料理を作りたければ家に置いておくべき本たち


我が家に備えてあるのは以下の2冊です。

カレーのすべて―プロの味、プロのテクニック

カレーのすべて―プロの味、プロのテクニック

カレーな薬膳

カレーな薬膳

『カレーのすべて』は日本中のインド料理・カレーの名店のレシピがズラリと載っており、これだけでも非常に貴重な資料です。南北インド料理は勿論のこと、スリランカアフガニスタンやネパールといった「インド亜大陸カレー文化圏」にまたがる諸国の料理、さらには東南アジア(特にマレーシアやインドネシア)やクレオール地域といった他地域のカレー、そして日本各地のインド風・欧風問わず名店のカレーについても紹介されています。が、いかんせんプロのお店のレシピなので具材や調味料の分量が「適量」としか書かれていないものが多く、初心者には結構つらいものがあります。


実は我が家で先に買ったのは『カレーな薬膳』の方で、こちらは事実上南インド料理の専門書ながら分量も全て細かく書かれているので、後で『カレーのすべて』を読みながら北インド料理を作る場合でも応用がききます。勿論著者の渡辺玲氏の他のレシピ本を参照するのも良いかと思います。


と、いうことで僕の個人的なマニアックな趣味の記事でした。コメントなどは大歓迎ですが、断じて専門家ではありませんので質問の類はご遠慮ください(というか上記の書籍をご参照ください)。。。

*1:厳密にはインド本国では「カレー」と言ったら「ごはん」ないし「おかず」ぐらいの意味しかないそうですが、便宜上ここではいわゆるグレービーを伴う汁物を想定しておきます

*2:インドにアメリカ原産のトマトが伝来する前はヨーグルトが主流だったそうで、ムグライ料理(ムガール帝国宮廷由来のイスラム系料理)では揚げ玉ねぎ+ヨーグルトという肉系のカレーのレシピがあったらしい

*3:バターチキン(ムルグ・マッカーニー)発祥の店とされるオールドデリーのモティ・マハルという店では、バターチキンの甘み付けに砂糖も使っているそうです。ただし各種記事を読むとパンジャブ系のトマトとバター主体で酸味が強いタイプのものである模様

*4:有名な料理ではポーク・ビンダルーなど

*5:ヒンズー教イスラム教も豚肉食を厳しく禁じているので、これはゴアのみの食文化

*6:ジャイナ教徒などが代表例

*7:これは理研時代にインターンに来たムンバイの学生も言っていた話

*8:後述する渡辺玲氏のブログによれば、デリーのムスリム地域の奥深くにひっそりとビーフカレーを出す店があるのだとか

*9:大津屋さんで販売しています

*10:インド本国では皮なしかむね肉が好まれるが、我が家ではダシを取りたいので皮付きもも肉を好んで使っている

*11:手に入らない場合はししとうでも似たような風味が出せる

*12:鷹の爪、グリーンカルダモン、ブラックペッパーホールは後で炒める際に熱せられて割れて弾けるのを防ぐためにハサミなどで事前に割っておくと良い

*13:後述する渡辺玲氏の本によればこの順番が結構重要らしい

*14:どうしても水を入れた方が良さそうなら「ひたひた」程度、肉が辛うじて顔を出す程度の量に留めること

*15:ここでガラムマサラなどを入れるという手もある

*16:じゃがいもとカリフラワーのカレー

*17:ほうれん草をミキサーにかけて緑色にしたじゃがいものカレー