渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ

元祖「六本木で働くデータサイエンティスト」です / 道玄坂→銀座→東京→六本木→渋谷駅前

依然として高まり続ける「データサイエンティスト」への関心と、それを追う「データエンジニア」と

今回の記事はいつものようにネタが見つからなくて困ったので窮余の一策としての与太話です。話題はこのブログで時々やっている「データサイエンティスト&関連職に関するGoogle Trendsを用いた意識調査」です。


ちなみに、某協会が学生向けのアンケートで意識調査を行った結果が最近報じられていて、SEやコンサルタントなど他職種と比べた場合にどれくらいの立ち位置にあるかの参考になるかもしれません。


対象となる職種


完全に独断と偏見に基づきますが、今年のスキル要件記事で定義した「データサイエンティスト」「機械学習エンジニア」「データアーキテクト」の3つと、さらに後二者の言い換えもしくは類似概念とされそうな「データエンジニア」「AIエンジニア」の2つを加えた、計5つを今回の調査対象としました。


特に「データエンジニア」についてはやはり「データアーキテクト」という語がいわば玄人の間で使われているのに対して転職市場で良く使われている語であるという個人的な認識があり、「AIエンジニア」についても「機械学習エンジニア」よりは転職市場で頻出する語だと見ており、おそらくこちらの方がGoogle Trendsに引っかかりやすいだろうという予想のもとで選んでいます。


Google Trendsのデータを見てみる


では、早速Google Trendsで調べた結果を見てみましょう。上記の5つの検索ワードの、2012年3月28日〜2022年4月28日の、検索ボリュームの相対値が得られています。


非常に分かりやすいですね。やはり現在でも依然として「データサイエンティスト」の伸びが著しいことが分かります。2013年7月に第一次ブームのスパイクが見られることは以前から述べている通りですが、今回は2021年9月にそれを上回るスパイクが見られています。これはデータサイエンティスト検定™️の第1回が行われたことが要因だと考えられます。いずれにせよ、第一次ブームから9年が経っても「データサイエンティスト」への関心は高まり続けているようです。


これに対して、何と「機械学習エンジニア」「データアーキテクト」の二者は少なくともGoogle Trendsのglanularityでは全く引っかからず、0という判定になっています。少なくとも、「データサイエンティスト」の最大値に対して0.5%未満ぐらいしかないということは言えそうです。これはちょっと個人的には意外な結果でした。


一方、保険のために入れておいた「データエンジニア」「AIエンジニア」は予想通り一定の関心を集め続けていることが見て取れ、事前の予想が正しかったことが裏付けられた形になりました。特に「データエンジニア」はそれこそ10年前から一定のボリュームを持っているだけでなく、最近に至るまで「データサイエンティスト」に及ばないながらも上り基調を保っていることが分かります。


関連検索ワードを見てみる


Google Trendsでは調査対象とした検索ワードの関連ワードについての情報を得ることができます。そこで5つの対象職種それぞれの「注目」(rising)ワードを見てみましょう。


「データサイエンティスト」の関連ワードはこんな感じでした。流石に老舗ワードだけあるのと、DS検定に絡むこともあり某協会や、そのキャリアパス(具体的にはどの大学で学べばDSになれるか)、そして年収といったキャリアを意識したものが目立ちます。


機械学習エンジニア」はボリュームが小さいながらも、関連ワードにはそれらしきものが出ています。「AIエンジニア」が入っているところに、その定着「しなさ」加減が透けて見えますね(汗)。


「データアーキテクト」はもっと定着せず人口に膾炙しなかったせいか「こっちを検索したかったんじゃないの?」系関連ワードが目立ちます(汗)。ソリューションアーキテクトとはどう見ても異なる職掌なんですが、普通はIT業界で「アーキテクト」って言ったらやっぱりこっちなんですよね……。


一方で、伸び続けている「データエンジニア」なら現在の風潮に沿ってデータ基盤に関連する語が出てくるかと思いきや、関連ワードを見るとばっちり「データサイエンティスト」や「AI」などが出てきます。つまり、イメージとしては「データサイエンティストの亜流」ぐらいに見られているのではないかという印象があります。


最後に「AIエンジニア」ですが、どちらかというと「AI」という曖昧な概念に対する説明を探す感じの関連キーワードが多いように見受けました。先述したように「機械学習エンジニア」は人口に膾炙し切れなかったキーワードになりましたが、それを代替するかのように見える「AIエンジニア」もその実情が伝わりきっていないのかなという印象です。


感想など


結論としては「第一次ブームから9年が経ってもデータ関連職といったら相変わらず『データサイエンティスト』だけが純粋(もしくは第一)に想起されるキーワードで、それ以外の職種名は依然としてあまり広まっていない」ということが言えるのかなと思いました。「データエンジニア」「AIエンジニア」がそれを追う展開であるようには見えますが、関連ワードを見る限りでは「あくまでもデータサイエンティストの亜流」ぐらいにしか見られていないという気もします。


しかし、既に何度もこのブログでも指摘しているように「データサイエンティスト」という語はあまりにも多義的過ぎて、大半の現場で実態から乖離していることが多いというのが現状です。故に様々な下位区分というか、解像度の高い他区分をこのブログでは提唱しているのですが、やはり世間的にはいまいち広まっていないんだなと思った次第です。まぁ、一介の個人ブログでいくら提唱したところであまり広まらないのは当たり前ではありますが……。


ただ、現場での実態との乖離が方々で叫ばれている中にあって、依然としてのっぺらぼうな一枚岩としての「データサイエンティスト」像だけが世間向けに一人歩きし続けている状況が良いとも思いませんし、これを放置しているが故に様々な現場で「データサイエンティストを雇ったorデータサイエンティストとして雇われたが、こんなはずじゃなかった」的な悲劇が続発しているのだと考えると、やはり何とかしてもう少し解像度の高い分類を社会に定着させるべきなんじゃないか、と思います。